これまで、「一番好きな建築物は何ですか?」と聞かれたら、「酒田市にある土門拳記念館です。」と答えていたのですが、今後は、土門拳記念館と答えるか、鈴木大拙館と答えるか、とても悩みます。
今日、ご紹介させて頂くのは、金沢市にある鈴木大拙館。世界的な仏教哲学者・鈴木大拙(だいせつ)の考えに理解を深める文化施設です。設計は、建築家・谷口吉生氏。
建物は、展示だけではなく、来館者自らが、思索の場となることを目的としています。先日、ご紹介させて頂いた「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」での企画展は、「静けさの創造」がテーマとなっていましたが、この鈴木大拙館は、まさに「静けさの創造」を生み出している建築物です。
△エントランスから展示空間へ向かう内部回廊
△展示空間を水鏡の庭があらわれます。写真左端の外部回廊を通って、思索空間へ向かいます。
内部回廊と外部回廊は、実は壁を隔てて背中合わせの1本の廊下になっています。谷口吉生氏は、「まさか、同じ廊下を戻ってきたとは誰も思わない。」と述べていますが、私も実際に気が付きませんでした。それだけ、意識は、水鏡を中心とした閉ざされた空間に集中していたのだと思います。ベンチに座ると、自然と意識が「無」に向かいます。なんという、極上の建築空間でしょう。
△左側が思索空間棟
△直交する壁によって、思索空間と外界を切り離しています。
△壁の一部がスリットになっていて、ここにも水鏡への視点場が設けられています。自然と導かれるように、この場所にも立って、何かを考えたくなりますが、何も浮かびません。(笑)ただただ、美しい建築空間に圧倒されました。
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