「書斎は夫だけのものではありません。」
在宅勤務の普及に伴い、住宅に求められる間取りも少しづつ変化してきています。
近年は、住宅の高気密高断熱化を行ない、間仕切りを少なくして家全体を大きな1室空間とする間取りが一つのブームになりつつありましたが、新型コロナによる生活スタイルの変化によって、音や光の問題などプライベートスペースの大切さも重視されるようになってきました。
特に、共働きの夫婦が2人とも在宅勤務となった場合、それぞれのスペースを限られた床面積の中で確保することは、なかなか難しいのが現実です。
書斎は夫だけのものではありません。家事室は妻だけのものではありません。
やはり、「それぞれにプライベートスペースを確保し、家事を共有する」ことが、快適なステイホームを実現するためには必要なのではないでしょうか?
今回は「在宅勤務をする共働き夫婦」に最適な寝室の間取りの一例をご紹介いたします。
延床面積80m2(24坪)の木造2階建ての都市型狭小住宅です。まずは、寝室の間取りからご覧ください。
夫婦それぞれに小さな寝室を設け、その間に夫婦共有で使うウォークインクロゼットを設けています。玄関ホールと隔てる開き扉を閉じれば、全体が1室になり、それぞれの部屋の引き戸を閉めれば、完全個室になります。「ほどよい距離感」が保てる寝室です。
通常は1室として使用しますが、オンライン会議などで仕事をする場合は、別室として使用します。扉2枚を隔てるので、防音効果もあります。また、深夜まで仕事をしたい時でも、お互いの光を気にすることなく過ごすことができます。
3.75畳の最小限個室のススメ
それぞれの寝室の大きさは3.75畳です。
通常、寝室や子供室の大きさは最低4.5畳や6畳ないと成り立たないと思いがちですが、実は、3.75畳で十分、成り立つものなのです。
この寝室は、3.75畳の面積を半分に仕切り、半分の面積の床を小上がりにして布団を敷くスペースにしています。残りの半分の面積に机を置き、書斎スペースとしています。壁際には本棚を造り付けています。洋服類はウォークインクロゼットにしまうので、寝室としての機能はこれで十分、成り立ちます。
逆に、これ以上、広くても、部屋として出来る「機能」はさほど変わりません。実際に、この部屋を見学に来られたご家族のほとんどの皆さんが、「3.75畳は狭いと思っていたけど、この広さで十分!」とおっしゃいます。
もちろん、もっと広く面積を確保できれば、それに越したことはないのですが、寝室や子供室の面積を割り切ることで、リビングやキッチンなどの「共有スペース」の面積を広く確保することができ、快適なくつろぎ空間や、快適な家事動線を確保することができるのです。
ちなみに、家全体の間取りは、こんな感じです。
1階には、夫婦の寝室の他に、子供部屋も同じ大きさで確保しています。窓はそれぞれの個室に2箇所づつで換気対策を行なっています。万が一、新型コロナやインフルエンザになったとしても、隔離が容易です。
収納は、2箇所のウォークインクロゼットと階段下収納で、収納力も確保しています。
2階には、サンクンリビング、ダイニング、キッチン、浴室、洗面脱衣所、バルコニーを設けています。
洗面脱衣所は、2方向から出入りできるようにすることで、リビングとの回遊動線を実現したり、キッチンから洗濯機、バルコニーまでの家事動線を一直線で結べるようにしたりしています。
このあたりの詳細は、テーマが異なるので、また別の記事でお伝えしたいと思いますが、今回は写真だけアップしておきます。
今回、取り上げた寝室の間取りは一例に過ぎませんが、家にいる時間が増えた今、新しい生活スタイルを考慮すると、家族のコミュニケーションだけを重視したこれまでの家づくりではなく、家族のコミュニケーションと同じくらい家族のプライバシーも重視した家づくりが求められてくるのではないでしょうか?
家族だからこそ、実はプライバシーも大事。
今後、家づくりをご検討される方のご参考になれば幸いです。
一級建築士事務所 アトリエ橙
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